立駐機の塗装工事 塗装職人が建物の状態に合った最高の工事をする理由
前回のブログでは見積書の見方、そして塗装職人と他社の工事内容の差とはどのようなものなのかご説明をしました。
そんな差が分かる工事内容の例として、立駐機の下地塗装の工程について書いたのですが、今回はその立駐機工事の続き、仕上げの工程について書きたいと思います。
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また、こうしていつも僕が担当した工事の詳細をブログにあげていると、お客様から「このブログと同じように塗装してください」とおっしゃられることが……。
実は、ブログでご紹介した家と他の家を、まったく同じように仕上げることというのはできません。なぜなら全ての建物は状態が違い、それに合った工事をする必要があるからです。
建物に合った塗装工事とはなにか、詳しく解説したいと思います。
立駐機塗装の中塗り、上塗り
まずは、立駐機に行った塗装工事の続きを説明いたします。
下塗りが終わり、いよいよ中塗り工事です。
下塗り用の塗料を、中塗り、上塗りがはっきりと区別つくようにこの班は赤い色で仕上げましたので、赤色が見えなくなるようにきちんと塗りあげます。
塗る場所によって、ローラーの種類も変えました。
立駐機のパレットは、塗る箇所が平面のように見えますが、立ち上がり部分などはヘッドの小さいローラーに変えて塗料の飛び散りを抑えることが大切です。
なぜ飛び散ってしまうかというと、ローラーは転がしながら塗装をします。すると、ローラーに付着した塗料は遠心力で塗装面に付着するのです。
ローラーに対し、きちんと塗る面を押し当てられれば塗料が飛び散ることはないのですが、塗る面よりもローラーがはみ出してしまうと、塗料が飛散してしまいます。
そこで、パレットの立ち上がり部分など面積の小さい箇所には、小さい2インチローラーの使用を。
広い面で使用する通常使いの6インチローラーと比べれば、幅の狭い2インチで塗るということは、それだけ塗る面積が小さくなりますので時間がかかります。
しかし、美しい仕上げのためにこうした小まめなローラーの交換が必要なのです。
さらに、ローラーは塗る箇所によって毛のタイプも変更します。
ウールや、マイクロファイバー、ナイロン、アクリルなど、用途によって使い分けを。
一見すると、すべての面を同じように塗っているように見えますが、ひとつひとつ用途にあった道具に持ち替えて塗っているのです。
今回、下地にはハイポン20デクロという強溶剤を使用しました。これは非常に強いさび止めで、塩害地などでも使用できるタイプのものです。
亜鉛メッキなど、塗料の付きにくい物でも、付着性が高いため塗布することができます。
次に中塗り、上塗り剤として、ニッペの立駐機床用の塗料を塗り、隙間なく上塗りをしたらステッカー部分を覆っていた養生も剥がして完成です。
パーフェクトな現場とは
写真をご覧下さい。仕上げまですべて終わり、立駐機の工事が無事終了しました。
終わってみて思うのは「仕上げを最後まで追求できた工事だった」ということです。
というのも、まずは元の立駐機の状態が違いました。
建物の内部にあるタイプでしたので、傷みが非常にすくなく、状態の良かったのです。
さらにすばらしかったのが、お客様の協力…。
立駐機ですので、普段はお客様の車が駐車してある場所です。
マンションの管理会社との間に、立駐機の管理会社の方が入ってくれたのですが、この方も非常に取り回しがうまく、居住者様の車移動から、タイヤ止めを外す作業まで、これ以上なくスムーズに行って下さいました。
それゆえに、職人たちも力を発揮することができたのです。
ですので、このブログを読んで「うちも同じように塗装をしてほしい」とおっしゃられた場合には、僕は少し躊躇するかもしれません。
なぜなら、ここまで同じ条件、状態の現場があるとは思えないからです。
では、なぜそんなに現場によって状況は変わるのでしょう。
見積り前に知ってほしい 現場によって違う家の状態とは
現場によって工事の状況が変わる理由。それは、お客様の家に下記のような「違い」があるからです。
- 建てるメーカーの違い
- 建てる大工や業者の違い
- 建物に住む人の手入れや住み方の違い
- 建物を取り巻く環境の違い
- 再塗装するタイミングの違い
家というカテゴリーは同じであるものの、この5つの違いから家という土台の状態が全く別ものになってしまうのです。
例えば、今回の立駐機の塗装ブログを読んで、うちのマンションの立駐機も同じように塗装して欲しいと思った方がいたとします。
しかし、その立駐機の状態が、下記の動画のような状態であればスタート地点が違うため、工事の方法も、費用も大きく変わることに。
併せて観たいYouTube 立駐機の塗装
よく塗装のご依頼を頂いたお客様から「隣と同じメーカーで建てているから、うちも同じ状態だと思う」といわれることがあります。
ところが、同じ状態ではないのです。
建っている立地が違う時点で、家の傷み方は変わります。
また、意外なことですが…大工によっても家の状態は変わるのです。
例えば、Aの大工は笠木を留める際に上からネジを打つタイプの流派の人で、Bの大工は笠木のサイドからネジを打つタイプの流派の人だったとします。
たかがネジを打つ場所が違うだけで、どちらも笠木を留めるということにおいて、変わりはありません。しかし、傷みかたは大きく変わってくるのです。
上にネジを打ったAの職人の方は、雨水の侵入がしやすくなり笠木から雨漏りすることに。
Bの職人は側面にネジを打っていたために、そこまで水の浸入はなくある程度笠木が持ちます。
こうした大工の施工方法にまで差があるため、同じ状態の家がないのです。
自動車などは、工場で設計図通りにラインに沿って作られます。同じメーカーの自動車であれば、車体によってネジを留める箇所が変わるなどということは起こらないでしょう。
けれども、家を建てる際にはそれが起こるのです。
ここまで、塗装職人ができる最高の立駐機塗装工事をご紹介しました。
しかし、この工事とまったく同じ内容の工事を行うことはもうできないでしょう。
なぜなら、お客様に一人として同じ人がいないように、家や建物の状態も一つとして同じではないからです。
そんな千差万別な状態の家だからこそ、塗装職人では行なっていることがあります。
それは、現場調査と徹底したオーダーメイドの見積もりです。
文字にすると、どの業者もやっている当たり前のことのように思いますが、弊社の現場調査と見積もりは内容が違います。
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塗装職人の現場調査は問診です
僕はよく、このブログで家の現場調査することを医者の問診に例えて話をします。
病気治療には、この問診がとても大事ですよね。
体のポテンシャル、年齢、既往歴、それらすべてを加味して問診する必要があります。
家も同じです。
設計図や、建てたメーカー、そして環境、家の状態など。すべてを把握してできる工事を判断します。
たまに、本当に残念なことですが…いざ工事が決まり足場を建て、2階の壁や屋根に登ったところ、ひどい状態の外壁や屋根を発見し、追加工事が発生してしまうことがあるのです。
見積り前の現場調査は、かなり真剣に行いますが、目に見えないところまで見つけることはできません。
もちろん、見積書を作った際に「足場に登った時の状態次第でお見積りが変わることもあります」と言い添えています。
しかし、追加工事をお伝えした時に工事に対してマイナスな印象を持たれるお客様もいらっしゃるのです。
問診はあくまでも、手術前のヒアリングです。
実際手術を始めてみたところ、思っていたよりも病状が進行していることは、よくある話です。どんなに百戦錬磨の医者だとしても、目に見えない箇所の病状を当てることはできません。
塗装工事の現場調査も同じです。
だからこそ、僕は真剣に全神経を集中して現場調査を行います。
しっかりと問診をし、工事が始まってからも状態を正しく判断する。お客様の家の状態を少しでも正確に把握してから工事することが、よりよい工事の仕上がりへとつながるからです。
塗装工事の保証の落とし穴
実は、前回ご紹介した立駐機の工事ですが、この塗装工事は保証がつきません。
「え?こんなに技術に自信があるように書いてあるのに保証がないの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、床用塗料というのは傷がつく要因の判明が難しいため、メーカー自体が保証をしていないのです。
経年劣化による傷なのか、傷がつきやすい靴や台車などによる原因の傷なのか…。立駐機であれば、車の誤作動による傷なのか、それとも何か別の要因なのか。
床という、もっとも傷む可能性が高いところゆえに、メーカーも保証ができないのです。
立駐機の塗装工事は、安いものではありません。
ですので、以前別の現場で立駐機塗装の保証がつかないことをお伝えすると、「プロとして自信がないのか」とおっしゃられたこともありました。
でもこれは、プロとしての自信とは関係ありません。
あくまでも、メーカーの基準なのです。
メーカーの保証がないものを、弊社が保証することはできません。
まれに、メーカー保証がないはずの工事なのに、保証を謳っている業者があります。
それを見た相見積りをしていたお客様が、保証がつく業者を選ばれたこともありました。
けれども、この保証。僕のような業者側からするとなんの保証がわからない非常にあいまいなものなのです。
予想ではありますが、その塗装工事をする業者が独自にしている保証ではないかと思います。
そして、本当にその保証どおりに何かトラブルがあった際に補修をしてくれるかというと、とても疑わしいのです。
塗装会社というのは、創業年数が長い会社というのはあまりありません。
というのも、保証から逃れるために工事するだけして5年くらい営業した後に会社をつぶし、社長をすげかえて社名を変え新しい会社となってまた営業をする…という業者が一定数あるのです。
塗装工事の不具合がでてくるのは、早くても3〜5年後。
せっかく保証がつくといわれていても、会社がつぶれていては保証をしてもらえません。
中には、会社が続いていているところもありますが、保証できない理由が契約書の中に小さく書いてあり、結局保証されない場合も。
保証とひと口に言っても、さまざまな種類の保証があります。
相見積もりをして保証内容も比べる場合には、その保証がメーカーのものなのか、業者独自のものなのか比べると良いでしょう。
また、メーカー保証にも注意すべきことがあります。
防水工事の際にある内容なのですが、10年保証する条件として「5年ごとに上塗りをすること」という文言があるのです。
これをしっかりと読んでいなかったことで上塗りをせず、保証を受けられなかったお客さまがいらっしゃいました。
弊社がお約束する保証は、メーカー保証です。
そして、こうした落とし穴がある場合には、事細かに説明いたします。
塗装工事の保証とはいったいどんなものなのか、正しい知識を持っていただけますと幸いです。
プロとして現場で最高の工事をするために
今回のブログでは、立駐機の塗装工事を通して塗装工事の本質をご説明しました。
一つとして同じ状態の家はないということ、そして工事につく保証の種類など。
正しい知識を持って工事にのぞむことによって、よりよい工事結果を手に入れることができます。
お客様の家に合った工事をするために。
どうか家によって状態はちがうということ、塗装工事に保証がつく場合、その保証とはいったいどんなものなのかということを正しくご理解下さい。
今回ご紹介した立駐機の塗装工事のように、お客様が工事への理解を深め、しっかり連携が取れれば、それだけ良い工事になります。
何かわからないことがあれば、ご質問下さい。
お客様からのご依頼を、お待ちしております。